プロとプロの特別対談。身体とこころについて

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    プロ同士の対談シリーズ第2弾の今回は、ピラティススタジオの代表である亀谷さんをお招きして、身体とこころをテーマに話し合いました。身体を動かすことでこころの安定にどう作用するのかなど、前回とはまた違った角度でお読みいただけると思いますので、さっそくご覧ください。

    前回の対談はこちら:福祉業界の課題や支援にかける思いを事業所代表の2人がトーク

    株式会社スタッフロール

    代表:高瀬 文聡

    福祉業界歴8年。エンジニア職を経験したのち、大手人材会社で営業や産業カウンセラーに従事。キャリアを積み、名古屋支店長として働くなかで、40代になったことを機に生き方を変えようと考え、スタッフロールの前身会社に入社。ビューズを通じてうつ病等の方の社会復帰支援に携わり、現在に至る。

    株式会社nano/ピラティススタジオnano

    代表:亀谷 なおみ

    フィットネス業界歴20年。もともと運動が好きという理由で会社員から転職してフィットネス業界に。グループ指導を5、6年ほど経験したのち、パーソナルレッスンと出会い1対1の指導を行なっていくなかでピラティスの良さを知る。以降はピラティスをメインとして、2006年にピラティススタジオnano」を設立。

    メンタルとピラティスの関係性

    高瀬:私と亀谷さんが出会ったのはかれこれ3年前になりますね。

    私自身は今年50歳になりますけど、なんだかんだで20代の中盤頃からピラティスをやっているんですよね。

     

    亀谷:そうなんですね!

     

    高瀬:そう、結構長いんですよ。マンツーマンではなくスポーツクラブのスタジオレッスンで集団として行なうものでしたが。

    それで、マンツーマンの形でやりたいなと名古屋市内で探していたときに、nanoさんを見つけて3年前から通いだしたわけです。でも私自身が20数年もピラティスを続けられているのって何なんだろうなって。

    体幹を鍛えると自分の軸ができるとか、身体のみの反応ではなくメンタル的にもそういうものができる感じがするんですよね。ただ鍛えるだけじゃなくて、体の機能として上手に使えるというか。それがメンタルにも作用している気がします。

     

    亀谷:ピラティスのそうした効果については正確にエビデンスが存在するわけではないので、専門家の方からするとそういう発信をするのは…という感じなので普段はあまり言わないのですが、ピラティスは背骨を動かしたりするじゃないですか。

    それで、背骨の横には自律神経が通っているので背骨を動かすことで自律神経の通りが良くなり、結果としてメンタルに影響が出ると言われているんですね。

    身体を動かすと気分が良くなるじゃないですか。それって背骨を動かすことでメンタルを整えていくところからきているので、ピラティス後は調子が良くなるとか快適に過ごせるようになるんだと思います。

     

    高瀬:なるほど。

     

    亀谷:あとはマンツーマンのときはお互いに集中してやっているんですが、グループレッスンでやると眠たくなるという方がいます。でもそれって実はいい傾向なんですよね。背骨、仙骨、骨盤を動かしていくことで副交感神経が働くと言われているので、眠たくなったりふわふわした感じになったりというのは、メンタル的にすごくいい状態になっていると言われたりします。

     

    高瀬:そうですね。ビューズでもマインドフルネスプログラムをやっていますが寝ちゃう方もいるんですよ。それと同じ感じかもしれないですね。

    ニーズという観点でいくと、ビューズではいろんなカテゴリのプログラムを利用者様に提供していて、そのなかで身体系のものには力を入れているんですね。ちょっと緩めのスポーツですとか、ボディワーク、ボディスキャン的なところを取り入れていたり、農業などのプログラムも取り入れています。それは支援者側のニーズとして、行なった方がいいと考えているので提供しているのですが、nanoさんのお客様はどういったニーズで来られるのですか?

     

    亀谷:大きく2つあります。1つはライト層の方。ここ2、3年の間でピラティスが流行っているのもあって、タレントや韓国アイドルの影響を受けて始めるといった20代の方が非常に増えました。

    もう1つは、整体や整形に通っていて、その場では良くなるけど結局根本的には改善されないため、自分で体を変えようというニーズを持って来てくださる方がいます。そうした方の中でも重症な方はとくにですが、気持ち的に元気がない状態ですので、「ここに来ると気持ちが違う」と言っていただけるようにサポートすることを心がけていますね。

    高瀬:ピラティスの指導のなかで、お客様への声かけなどメンタル的な要素として気をつけていることはありますか?

     

    亀谷:私はその方の背景を常に気にするようにしています。たとえば肩が上がっている方の場合、その理由や背景を知ろうとしたり、それを理解したうえでどこまで声をかけようかと考えます。お客様もすぐに心を開いてくれるわけではないので、開いてくれるまでは基本的に待つスタンスですね。

    その方の姿勢の良し悪しや筋肉だけで解決することばかりではないので気をつけています。

     

    高瀬:なるほど。ビューズでは利用者様が来所されたら、まずはじめにアセスメント面談を行なって病歴などを聞くんです。

    そこから、ラポールで関係性を作っていきつつニーズに応えていく形です。私たちの方は通所型ですし時間もあるのでその分やりやすいなと感じたのですが、亀谷さんの方はレッスン時間も限られているし、カウンセリングにしてもそこまでガッツリと聞かないじゃないですか。限られた時間の中で関係性を作るのはすごいなと思いました。

    ちなみにお客様のノンバーバルなところも観察されていますか?

     

    亀谷:しています。来店されたときの目線や仕草、表情をニュートラルな状態で見るようにしています。

    なんか前回と違うな〜って捉えてしまうと、良い悪いといったジャッジをし始めてしまうので。

     

    高瀬:ジャッジをしないというのはとても大事ですよね。マインドフルネスに接していかないといけないですよね。

    ニュートラルというのは私たちも常に意識しているところです。

     

    亀谷:そうなんです。たとえば指導者対お客様のような構図になると、教える側だという思いからそれが言動に現れてしまうのですが、もちろんそれは違いますしお客様とは対等だと考えているので、他のスタッフのそうした動きにも注視しています。

     

    高瀬:ちなみに本記事は採用ブログに掲載するものなので1つ聞きたいのですが、そういうことを初めから正せる人を採用しているのか、入社したあとでそうした言動が出てきた際に正しているのかでいうとどちらですか?

     

    亀谷:採用する時の視点としては、“働く喜び”みたいなことは絶対聞いています。ちょっと細かいことですが「講師になりたい」という方は、私の中で「ん?」となります。お客様が健康になって喜んでくれることにやりがいを感じるのか、それとも単に教えることが好きなのか。だから講師になりたいという考えの方は、お客様に対してマウント気味になりやすいと捉えてしまいます。

    喜びが自分に向いているので、教えたことで言うことを聞いた、自分はいい先生になれているぞといったマインドが入っているので、採用する際にはそのあたりを話しながら聞き出したりしています。

     

    高瀬:なるほど。というのもnanoさんのスタッフ皆さんに対して、ホスピタリティ的なところに一律的なものを感じるところがあるんですよね。言葉に言い表せないですが、そこの軸が通っているからなのだと感じました。

    もう1つ聞きたいのが、どのようにお客様に続けて来てもらえるかというところに心がけていることってありますか?

     

    亀谷:時間とお金を使ってスタジオに来てくれていることに「ありがたいな」って思えるかどうか。

    でも実際には「成果を出してよ」って話にもなるのと、決して払いやすい安価な金額ではないので、その点が皆さんの続きにくいところでもあるんです。成果ももちろん大事なのですが、それよりも信頼関係を積むのが前提でその先に成果があると思うので、お客様への「ありがとうと思える気持ち」を言葉にして相手に伝えられるかどうか、というのは大事だと思っています。

    もちろん成果や金銭のほかにもいろんな理由で辞める方がいますが、辞める際にも事後報告ではなく相談から入ってもらってから終わりにしましょうと言えるような信頼関係を築けるように心がけています。

     

    高瀬:今のがマインド面だとしてスキル面だといかがですか?レッスン中で意識していることとか。たとえば辞めないための指導や声かけなどしていますか?

     

    亀谷:辞めないための指導かぁ、たとえば最初と最後でちょっとした評価みたいなのをしますよね。

    でもそれが「なんか良くなりましたよ〜」みたいに具体性のないものではなく、各部位を示してなるべく数値化しながらお客様目線で具体的に伝えるようにしています。

    たとえばこのエクササイズを選んでいる理由や、動けなかった理由と本来あるべき状態に対して、現在のお客様の状態とのギャップなども伝える順番を徹底しながらお客様の目線で話すようにしていますね。

     

    高瀬:ビューズもそうですが、利用者様の目標(to-be)が「相談ができるようになりたい」としたときに、現状とのギャップに対してどのようにしてここに近づけていきましょう、といったのと似ていますね。

     

    亀谷:そうですね。おっしゃったように自分が何をできているのかがわからないのも辞めてしまう理由の1つです。

    自分の目標がどこなのか、いま自分はどこにいるのかわからず続けているので、レッスンの中でもゴールと現状、それに対する改善策を伝えることを常に行うようにしています。

     

    高瀬:まさに私が通わせていただきながら、実はそういう視点を学んでいるという裏テーマがあるんです(笑)

    ビューズもベースは一緒だろうなと思っているので、受ける立場になった時に利用者様の気持ちになれるじゃないですか。

    適切なフィードバックをもらえますし、いつも◯と×という形で表現しながらいいところもできないところもちゃんと言ってくれる。そこのバランスが大事なんですよ、やる気をくすぐってくれるというか。

    あとはスモールステップと適切なフィードバックで上達していくという原理原則を知っているからこそ、それを体感することで結果的に私自身が続けられているので、今日はそこのところをお聞きして確認したかったんですよね。

     

    改めてピラティスとは何か

    高瀬:そういえばさきほどの話にあったライト層の方のように、ピラティスが一般化しつつあるじゃないですか。でもピラティスって何?と聞かれるとなかなか説明が難しいですよね?

     

    亀谷:それ、何年経っても難しいんですよ。それこそ相手によっても説明内容を分けるようにしていますが、ライト層の方へは身体の使い方(概念)の説明をしてもポカンとされてしまうので、“体幹トレーニング”とだけお伝えしています。

    体幹トレーニングっていうのは、要はお腹を鍛えて強化する感じですよね。ピラティスは体幹を鍛えることで“体の連動性”が出てきて、身体の使い方に変化が現れたことによって痛みの改善につながっていくので、実際はお腹を鍛えるだけではないんですよね。たとえるならそこは過程のなかの第1段階という感じです。

     

    高瀬: それと先ほどのメンタルの話ですよね。エビデンスはないにしても自律神経を保てるようになってくる点。

     

    亀谷:そうですね。おっしゃるとおりです。

    高瀬:私は以前から、利用者様にはピラティスをやってほしいなと思っているんですよね。

    メンタルに効くなどの話でもそうですが、鬱になったから他のことが制限されてしまい別の病気を患ったり、別の病気を患ったことによって二次的に鬱になる方も多くいますが、やはり日頃の姿勢を整えておくことが大事だと思うんですよ。そういう方って不安で緊張しているから身体がますます固くなっていくし、そういう症状や課題を抱えている方が多いからこそピラティスをやってほしいなって。

     

    亀谷:そうですよね。集団で強度の低いものをやるとかですね。たとえば呼吸で肋骨を動かすとか。しょぼんとしていると下が動くし、自信があるときは上が動くしって感じで。

     

    高瀬:症状の中で下呼吸になってしまっている方がいるんですよ。呼吸が浅くて早いんですよね。

    深くゆっくりと深呼吸をすれば落ち着くので、そういう呼吸法だけでも利用者様には知ってほしいなと思います。

     

    亀谷:そうですね。呼吸で一番ハードルなくできるのが、呼吸をすると肋骨の広がる、閉じるが生じるので、正面を向いて立ち呼吸をすると目線は勝手に上がりますよ。

     

    高瀬:本当に目線上がりますもんね。それはそうと私ばかりが質問をしまくっていますが亀谷さんから私に何かご質問はありますか?

     

    亀谷:何でも話してくださいって言われるよりは質問してくださった方が答えやすいかなと(笑)

    以前クリニックに呼ばれて行なっていた際に、動ける元気な方が3、4人ほど来てくださったのですが続かなかったというか。どうも“運動するのは元気な人がやるものだ“という認識がすごくあるみたいで、元気になってからしか行っちゃダメみたいな。

    元気な時って自分でコントロールできるじゃないですか。自分が落ちているなって気付けるし。でも本当に落ちすぎちゃっている場合だと、落ちていることに気付けなかったり気付いていても無理だって。そういう方たちにどうモチベーションを保ってもらっているのか聞いてみたいです。

     

    高瀬:そうですね。モチベーションが低いなりにできていることをまず認めることですね。落ちていて良くないって言っているけど、ちゃんとここに来れているから良しとしましょうよ。とか。

    べき思考があったりするのでつい高いところを見上げてしまいがちなのですが、「今で十分ですから、Not ToDoを意識しましょう」って伝えます。

     

    亀谷:なるほど〜。

     

    高瀬:逆に“やらない”ことを意識してもらうように伝えていますね。焦ってしまうとついやることばかり考えてしまうので。

     

    亀谷:私たちもそれはありますね。やはり時間を使って来てくれているので、「成果を出さなきゃ!」みたいな方向に行ってしまい、お客様の気持ちの変化に気づけない時があります。もちろん指導者として引っ張ってあげる部分も必要ですが、それをずっと引っ張り続けるみたいな。一方的な指導になるとかけ違いが起きてしまうんだなと思いました。

     

    ・・・・・・

    いかがでしたでしょうか。プロ×プロの対談シリーズ第2弾として、今回もボリュームのある深い内容をお話することができました。この記事をお読みいただいた皆さんも、機会があればぜひ一度nanoさんの体験に参加してみてください。

    今回お越しくださった亀谷さんが運営しているピラティススタジオnanoのHP

     

    前回の対談はこちら:福祉業界の課題や支援にかける思いを事業所代表の2人がトーク

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