【プロ×プロの対談】福祉業界の課題や支援にかける思いを事業所代表の2人がトーク
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今回は福祉業界の一線で活躍するプロの支援員であり、経営者でもある2人の対談です。業界を取り巻く課題の提起や支援員の採用について考えること、今後のビジョンなど、胸のうちにある思いを話しあってもらいました。ではさっそく見ていきましょう。
株式会社スタッフロール
代表:高瀬 文聡
業界歴8年。エンジニア職を経験したのち、大手人材会社で営業や産業カウンセラーに従事。キャリアを積み、名古屋支店長として働くなかで、40代になったことを機に生き方を変えようと考え、スタッフロールの前身会社に入社。ビューズを通じてうつ病等の方の社会復帰支援に携わり、現在に至る。
代表:野々村 翔
業界歴8年。前職は大手レンタル、リユース店に勤務。店長として採用に携わるなかで障害者雇用やジョブコーチに興味を持ち、特例子会社へ移って社内推進を行なう。そこで、もっと支援の幅を広げたいと考え2022年に株式会社グロウサイドを設立。現在は名古屋市北区のグロウサイドにて障害者就労移行支援を行なっている。
高瀬:乱立している就労移行施設を後発で始められたことに対してお聞きしたいのですが、他事業所との差別化など、何か意識しているところはありますか?
野々村:就労移行は名古屋だけでも90事業所以上あるのですが、実は全国的に見ても就職者を出していない就労移行事業所が非常に多いんです。統計的に公表されているものをみても”全体の35%ほどが就職者ゼロ”という状況なんですよね。前職時代、採用側で関わっているときにも就労移行事業者の方々とはお付き合いがありましたが、実をいうとその支援のレベルや質には不満がありました。そうした経緯もあり、グロウサイドでは他の事業所よりも支援の質を高くし、雇用する側が不満に思っていた部分をできるだけ解消できるサービス提供を意識しています。
高瀬:私もチラホラと雇用する側の不満は聞くのですが、具体的にはどういったところが不満だったんですか?
野々村:まず自己理解が非常に薄いです。当事者の方の自己理解が薄いのはある程度仕方のない部分としても、支援者側も理解していないケースが多々ありました。たとえば私が前職時に社内でジョブコーチをしていた時ですが、ある方が毎回同じミスをするということで「おかしいな」と感じ、色覚テストを行ない色覚異常の有無を確認したら赤系が見えていなくて。ある程度は色の判別をしなければならない仕事でしたので、その方は完全に業務アンマッチだったわけです。就労移行ではそのくらいのことも事前に調べていないの?と憤りを感じましたね。
高瀬:なるほど。ちなみにこれは一般就労でも一緒だと思うのですが、「なぜこの会社で働きたいのか」を本人自身が分かっていないことが多いですよね。「福祉施設から言われたから来ました」といった感じで自己理解もできていないし、「どこでもいいや」みたいな感じなんですよね。貢献意欲や帰属意識は大丈夫なのか?と思ってしまいます。
野々村:事業所として何かしらの意図があるとしても、利用者の方に説明をしていないし、納得させられるような関係性を築けていないことが非常に良くないですね。また、仕事への貢献感だったり、自分の成長イメージやビジョンを持てていないのもすごく問題だろうなと。それは福祉側の問題でもあるし、企業側の問題でもあると思うんですよね。障害者雇用のなかで彼らに生産性を求めていない、居てくれればいい、法定雇用さえ満たせられればいいと。企業ビジョンの延長線上に障害者雇用が置かれていないことが非常に問題だと思っています。
高瀬:そうですね、確かにそこの問題はありますね。”同じ会社で働いているのに同じ船に乗せてもらえていない”という状況が作られてしまっている。これだけ世の中で多様性理解やSDGsなどと言っているわりに、実際には全然追いついていないと感じます。
野々村:そうなんです。障害者の方を雇用するからにはしっかりと戦力化であったり、彼らの育成計画であったり、育成するためのリソースをどう作るかという部分がきちんと経営戦略に組み込まれていないとおかしいんですよね。
高瀬:企業側としては、そこに対するノウハウがない、なかなか工数が割けないなど、いろいろと懸念する意見もあると思います。とはいえ、ニワトリとタマゴの話みたく工数を割けないのなら、工数を作れるように障害者の方を育成しなさいよ、という話にもなりますが。
野々村:障害者雇用ってマネジメントスキルが高くないと難しいんです。一般の方よりも多様ですし、どう活躍できるかという部分を引き出していく必要があるし、業務の調整も含めてとても柔軟なマネジメントが求められますが、実際の現場で充てられるのはマネジメントが苦手な方だったり、優しいだけの方が充てられやすいので、そうした部分も非常に課題なんじゃないかなと。
高瀬:今回は支援員の採用活動に関する企画ということで、採用=リソースの話になってきますが、リソースについてどう捉えていますか?
野々村:我々福祉施設のリソースでいうと、職員の支援力自体が商品のため、そこを育成できる環境でなければならないと考えています。採用に関しても誰でもいいわけではないので、しっかりと見定められなければならないですし、高いレベルを要求するからにはそれなりの給与を提示しなければいけないと考えています。
高瀬:そうですね。グロウサイドさんは、スタートアップメンバーの方はもちろん、新規で採用した方も含めて“いかに育成〜定着させていくか”というところで、今後の採用計画や採用基準などはどうですか?
野々村:今後は就労移行よりも制度(社会福祉制度)外の事業に人員を増やしていく予定です。
採用したら2ヶ月ほどをかけて育成し、その後は数ヶ月間OJTで見ていくことで、メンターのサポートを受けながらであれば概ね支援ができるであろう、というところまでが”見える人”を採用したいです。採用に関してはどちらかというと、バリバリに福祉をやってきた人ではない方が育成しやすいなと思っています。特に就労移行だとビジネス的なマインドも必要になってくるし、企業との折衝や提案も入ってくるので、そうしたマインドがない方だと難しいですね。たとえば福祉の場合だと、個にバランスの軸が全て置かれているわけですが、企業の場合は全体に軸が置かれていて、個はあくまでその一部なわけじゃないですか。そこのバランスの軸位置を見れる人がビジネス的なマインドのある人だと思っています。
高瀬:そうですね。バランス感覚の取れた人というのは、この業界や仕事においてとても重要な基準だと思いますね。自分の軸と支援の軸、事業所として持っている軸をちゃんと合わせられる人の採用が大切だと感じます。
野々村:おっしゃる通りです。事業所の支援ビジョンや方向性が明確でない事業所もたくさんあって、支援者が持っている支援知識や考え方だけで支援していたりすると、担当ごとにまったく違った支援になってしまったりしますよね。
高瀬:当社は立ち上げてすぐに、「ビジョン・ミッション・バリュー」を作って言語化をするところへ投資をしましたね。「自分の在り方を一緒に見つける」というミッションもその時に掲げました。ちょうど前身会社で色々あり残ったメンバーでそれらを引き継ぐときに、私を含めた3人の意識合わせをするためにも作った方がいいと考えたのですが、結果的に正解だったと考えています。
野々村:スタッフロールさんは、何かしら将来的なビジョンなど持っているのでしょうか?
高瀬:誰もが自分の在り方に基づいた生き方ができることが幸せだと考え、そうした世の中が広がっていけばいいなと思います。当社を卒業したスタッフも利用者様も同じマインドを持ち、自分の在り方のもとに進んでいってくれたらいいですし、そうしたDNAが社会や地域に広がっていき、新たな社会資源になっていってくれることを期待しています。また、横展開として事業所(ビューズ)を増やすことは支援の質が落ちるので考えていません。でも縦展開は有りだと思います。たとえば利用者様からあがってくる課題を見ていると、企業やクリニックに対してまだまだ働きかけることがあるなと考えているからです。
野々村:そうですね。もっと裾の尾の部分を作っていくことは大切ですよね。私も就労移行支援の事業所を広げる意識はあまりなく、どちらかというと就労移行後の部分をどう作っていこうかと考えています。企業経営者に対してどのように「障害者雇用のビジョンを持ってもらうか」というところへの事業を進めていきたいですし、障害者の方々を自社雇用をするための事業や、人材育成するための機関を作っていきたいなど考えています。
高瀬:育成というテーマですね。企業にとっても人材育成は結構ポイントになっているじゃないですか。リスキリングなどもそうですけど私も育成に関しては注視しています。
いかがでしたでしょうか。今回は外部の方をお招きして「プロ×プロ対談」を行いました。日ごろ、あまり知ることができない情報も知ることができたかと思います。「プロ×プロ対談」は以降シリーズ化も考えていますので、乞うご期待!
今回の対談にご協力いただいたグロウサイドの野々村さんが運営する事業所HPはこちら
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